辛いものを食べてダイエットができたら、おいしいし簡単で一石二鳥ですよね。しかし食べるだけで痩せることができるのでしょうか?巷に流れる『辛いものダイエット』の真偽を調査し、正しい方法をご紹介します。
目次
辛い食べ物はダイエットに効果的!その理由とは?
辛い食べ物でダイエットを行う企画は、テレビや雑誌などでよく見かけますよね。確かに辛いもの好きの方は痩せているイメージがあり、韓国やタイ、中国などの辛い料理は痩せそうなイメージがあります。
しかし、どうして辛いものはダイエット効果があるとされているのでしょうか? まずは辛い食べ物で得られる、ダイエット効果について見てみましょう。
体温が上がり新陳代謝がアップ
辛味成分には、新陳代謝を促進させる効果があるといわれています。食べるとカッとからだが熱くなり、体温が上がるのを感じますよね?
人間は体温を維持するために莫大なエネルギーを使っているため、体温が1℃上がれば基礎代謝が13%UPするので、体温は高い方がダイエットには有利なのです。
例えば、平熱36℃の成人男性の体温が37℃になった場合で考えてみましょう。成人男性の平均的な基礎代謝は1,500kcal程度ですので、1日で136.5kcal、1ヶ月にすると4,095kcalも多くカロリーを消費できているのです。
辛味成分だけで1℃の体温上昇は難しいとしても、積極的に体温を上げるようにすると、効果的にダイエットができます。
血行を良くして冷えを改善
辛味成分は小腸で吸収され、血液に乗って脳へ渡り、交感神経系を刺激します。このことによりアドレナリンが出て体温が上がり、血行が改善されて冷えを改善してくれます。
ダイエットがうまくいかない原因に、体温が低く血の巡りが悪いことが挙げられます。血がうまく循環していないとそれだけで代謝が下がりますし、余分な水分が排出されにくくなってむくみます。からだを動かし体温を上げることで血流を促せますが、辛味成分は食べるだけで脳を刺激し、この効果が得られるのです。
脂肪の分解を促進してくれる
辛味成分を摂取すると体温が上がって基礎代謝がUPすることにより、消費カロリーが増えて脂肪燃焼効果がありますし、交感神経を刺激することでも脂肪分解を促進できます。
『京都大学農学研究科栄養化学研究室』では、“カプサイシン”という辛味成分を、ネズミに長期間投与した実験が行われ、結果、体脂肪の蓄積を抑制できたと報告されました。また、人間に対しても酸素消費量が増加した結果が出ています。
参考 トウガラシの辛味と痛みとエネルギー代謝この実験からも分かるように、辛味成分はダイエットに効果的なのです。
香辛料そのものは低カロリー
辛さとカロリーに直接的な関係はなく、辛味成分となる香辛料のカロリーは、100g当たり200~400kcal程度となっています。この数字を見ると結構高く感じてしまいますが、実際1人前で使用されるのは多くても5g程度なので、10 kcalほどです。
この程度なら辛味成分の脂肪燃焼効果の方が上回るので、特に気にする必要はありません。
また、香辛料を上手に利用すれば、高カロリーな調味料であるマヨネーズやみりんなどの量を減らせたり、塩分や糖分の摂りすぎを抑えたりすることができます。香辛料を使うと薄味にしてもしっかりと旨味を感じられるため、ダイエット食に使用するのが向いているのです。
辛い食べ物を食べているだけでは痩せない!
辛いものにはダイエットを助ける効能が豊富にありますが、直接的に痩せる効果があるわけではありません。そのため辛い食べ物だけ食べてれば痩せるということはなく、あくまでダイエットのサポートとして利用するようにしましょう。また、ダイエットを妨げてしまう思わぬ落とし穴もあるので、注意が必要です。
高カロリーな料理なら意味なし
辛味成分はダイエットに効果的だからと、辛い料理をたらふく食べていたら意味がありません。激辛ラーメンなどが辛さを競うように流行していますが、ラーメンの麺は小麦粉が主原料で、替え玉などをしたら炭水化物の摂りすぎです。
同じようにカレーもご飯をお替りしてはカロリーの摂りすぎになるので、炭水化物と食べるときは量を考えなければいけません。
また、辛さが人気の四川料理などは、炒め物や揚げ物が豊富で、さらにごま油やラードといった脂質が高い料理が多くなっています。脂はカロリーが高く辛味の効能を飛び越えてしまうので、食べるメニューを選ばなければダイエットは難しいでしょう。
食欲増進効果に注意
「辛い!」「舌が痺れる」といった刺激が脳に伝わると、それを痛みだと認識してしまい、緩和させるために“ベータエンドルフィン”という成分を分泌します。これは“モルヒネ”と同じ働きがあり、鎮痛成分としてかなり高い能力を発揮します。
『脳内麻薬』とも呼ばれ気分が高まり興奮状態となるので、食欲も増すのではないかといわれているのです。
また、直接胃を刺激するので消化液が多量に分泌されることとなり、相乗効果で唾液も分泌されます。そして食欲が増すだけでなく、腸内も活発に動き出し、栄養分の吸収率が高くなることもあるのです。
理性では食事量を抑えようと思っても、これらの成分の働きが食欲を増進させてしまい、食べた分だけ吸収してしまっては痩せることは不可能です。食事量は適量を守って、ダイエットに効果的な効能だけを取り入れるようにしましょう。
適度な運動も必要
食べ物だけでダイエットしようとすると、どうしても栄養が偏ります。栄養をしっかり取り、健康的にダイエットがしたいなら運動を切り離すことはできません。
さらに、脂肪と筋肉では筋肉が5倍ほど減りやすいといわれ、食事制限だけでダイエットをしてしまうと筋肉が真っ先に減ってしまうのです。確かに体重の減りは早いですが、筋肉が少なくなれば基礎代謝がへるので、摂取カロリーを減らしていかなければ痩せることができなくなり、栄養不足が加速してしまいます。
筋肉が減るのは、男らしさが失われることにもつながるので、可能な限り運動をしながら辛い食べ物を併用するようにしましょう。
辛い食べ物で効率的にダイエットする方法
それでは実際に、辛い食べ物でダイエットする方法を見てみましょう。
食事に取り入れたいおすすめの香辛料
唐辛子
辛いものの代表と言えば、唐辛子ですよね。ピーマンなどの仲間で、ナス科のトウガラシ属に分類されます。唐辛子は栽培環境で辛さの度合いが変わり、甘みが強いものがピーマンやシシトウ、辛味が強いものはハラペーニョや鷹の爪と種類が分かれます。日本ではこの鷹の爪を粉末状にしたものを、唐辛子と呼んでいます。
そして唐辛子には“カプサイシン”という辛味成分が含まれ、これが基礎代謝の向上や脂肪燃焼を助けダイエットへの効果が期待できます。
黒コショウ
黒コショウはポピュラーな香辛料で、世界で使用されています。コショウ科のコショウ属に分類され、インドが原産地です。
黒コショウには“ピペリン”という辛味成分が含まれ、胃腸の調子を整えて代謝を促す効果が期待できます。さらにカリウムが塩分の排出を助けてむくみを予防し、ダイエット中に不足しがちな鉄分も含まれているという、まさにダイエットに最適な香辛料です。どんな料理にも合いやすいので、日ごろから使用しやすいのが嬉しいですね。
生姜
漢方などにも用いられる生姜は、からだに嬉しい効能がたくさんあることで有名ですよね。ダイエットに効果が高いのが辛味成分の“ジンゲロール”で、免疫細胞の活性化や胆汁分泌の促進などが期待でき、脂肪燃焼が望めます。しかしとてもデリケートな成分で、空気に触れると3分程度で酸化して消えてしまうので注意が必要です。
しかし、このジンゲロールは乾燥させたり熱することで“ジンゲロン”という成分を生み出します。血行促進や血圧の安定、脂肪の燃焼が期待できるので、料理に入れて熱してもダイエット効果があります。
わさび
わさびはアブラナ科ワサビ属に分類され、日本の代表的な香辛料です。よく『本わさび』と呼ばれますが、これは日本原産かどうかを区別するためです。『水わさび』や『畑わさび』が日本のわさびで、風味が豊かでダイエットの効能が高いという特長があります。“本”がついていないわさびにはリーズナブルな『西洋わさび』が配合されて、辛味は強くなるのですが、本わさびよりダイエットの効能が劣るので選ぶ際は本わさびにしましょう。
わさびがダイエットにおすすめなのは、“わさびスルフィニル”という成分が含まれているからです。これは腸内環境を整える働きがあり、血行も良くしてくれます。
山椒
山椒(さんしょう)は別名『ハジカミ』とも呼ばれ、原産は日本です。うな重のお供として有名ですが、味は独特な風味と辛さが特長です。
そんな山椒は、“マグネシウム”・“カリウム”・“リン”という主要ミネラルが豊富に含まれた香辛料です。ミネラルは直接的に栄養に結び付く成分ではありませんが、タンパク質や脂質、糖質などの代謝を促してくれる重要な成分です。
ミネラルが不足していると、ダイエット効果が思うように出ないので、ミネラルはダイエットの補助成分として必須となっています。
持ち歩いて食事にちょい足し
ご紹介したような香辛料はそれだけで食べることは難しいので、食事の際にちょい足しを心掛けましょう。一味唐辛子や黒コショウ、山椒などは携帯しやすく料理にサッとかけるのも容易なのでおすすめです。
また、わさびや生姜は薬味としての役割が強いので、お刺身や肉などと一緒に出てきたら、積極的につけて食べると良いですね。
取り入れる量は1日小さじ1杯程度でいいので、朝食の食パンに黒コショウを、昼食のお味噌汁には一味唐辛子、夕食のお刺身にはわさびと生姜、というように、小量ずつ摂取してみてください。
ドリンクに入れる
最近フルーツなどを入れたデトックスウォーターが人気ですが、同じような原理でコショウや生姜を飲み物に入れるだけでもデトックスウォーターになります。ただし味付けが難しく、慣れるまでは飲みにくいかもしれません。
そんなときはお茶など味のある飲み物に入れてみると、飲みやすくなりますよ。また、ハチミツや黒砂糖など天然の糖分で味つけしても良いですね。
おすすめ料理
外食時や家で自炊するときのメニューも、香辛料が使用された辛い料理を選んでみましょう。おすすめなのはなるべくカロリーが低く、炭水化物、脂質、糖質が低いものです。
カレー
カレーは高カロリー料理というイメージが強い方も多いですが、スパイスから作られたものは低カロリーです。市販のルーは油脂類が多すぎるためカロリーが高くなりやすいですが、カレー粉をはじめ複数の香辛料を調合することで、カロリーは低いのに本格的でおいしいカレーを作ることができます。
また、具材も豆や野菜、鶏肉中心にすることで、グッとカロリーを抑えられますよ。
トムヤムクン
一時ブームを起こしたトムヤムクンですが、辛味と酸味が特長のタイのスープです。世界3大スープのひとつともいわれていて、具材も鶏肉や魚介など、ヘルシーなものが多いのでダイエットに最適です。
キムチなどがベースの鍋
鍋は基本的にカロリーが低く、野菜をたくさん摂れるためダイエットに効果的です。さらに代謝を良くするため、スープの味をキムチなど辛味成分が含まれたものにしてみましょう。からだがぽかぽかとして代謝が上がり、鍋の満腹感で食べすぎを抑えることも可能です。
辛い食べ物の摂りすぎには注意が必要
どんな食べ物も摂りすぎは良くないのは何となくわかりますが、では、摂りすぎとはどれくらいの量をいうのでしょうか?
日本では辛味系香辛料の許容摂取量というのが、明確にはされていません。しかしドイツではカプサイシンの摂取量について調査が行われていて、大人は1回で最大5mg/kg bw(body weight)までとされています。
参考 カプサイシンに関する詳細情報農林水産省これは体重1kgあたりの摂取量を表しているので、60kgの場合は300mgまでという計算になります。唐辛子1gあたり、約3mg程度しか含まれていませんので、通常の料理なら摂りすぎることはないでしょう。
ただし、辛さを自分で調節できるような場合には、辛くしすぎないよう注意して食べるようにしてください。また、辛いものが苦手な方や刺激物に敏感な方は、目安よりも少ない量がおすすめです。
胃腸が弱まり下痢気味になる
刺激物の摂りすぎは、胃腸に過度な負担がかかり粘膜を傷つけるおそれがあります。そうすると消化がうまくできなくなり、下痢の症状が出ます。男性は女性より腸が短く、下痢になりやすい体質なので特に気をつけたいですね。
さらに胃が直接ダメージを受け、胃炎や胃潰瘍になることもあります。辛いものを食べると胃がむかついたり、痛みや吐き気がするようなら、すぐに食べるのをやめて病院に行きましょう。
味覚障害のおそれ
人間は舌の付け根の方にある、『味蕾(みらい)』という部位で味を感じ取っています。まるで花のつぼみのような形をしている部位で、若い頃はこれが複数あり、より味に敏感だといわれています。年を重ねるごとに減っていくものですが、刺激物によっても減少してしまうのです。
辛いものを好む方は味の判別がしにくくなり、やがては味をほとんど感じなくなることもあるので、注意が必要です。
息切れや喘息の悪化
辛味は舌だけではなく触れた器官に影響を与えるため、気管支などにも注意が必要です。もとから喘息持ちの場合は悪化することがありますし、辛いものを食べた後に咳き込んだり、息切れがしやすくなるなどの症状が出ることもあります。
辛いものは癖になりやすい
食べすぎは悪影響だとわかっていても、癖になりやすいので注意が必要です。先ほどご紹介したように、香味成分は脳へ刺激を与え脳内麻薬を分泌させます。これに爽快感があり興奮も高めてくれるため、「もっと欲しい」と思うようになってしまうのです。
そしてさらに強い刺激を求め辛さを増してしまい、ダイエットのために行っていたはずが見当違いな方へ進んでしまうこともあります。辛いものが元から得意な人ほど癖になりやすいので、適切な辛さを守るよう気をつけてください。
辛いものを活用してダイエットを成功させよう!
辛い食べ物は、香辛料の辛味成分によって、代謝の向上や血行の促進、脂肪の燃焼などを助け、ダイエットの強い味方であることが分かりました。
ただし、辛味成分だけでダイエットができるわけではなく、運動や食事制限をしながらさらに効果を高めるためのサポートだと思って使用しましょう。
方法は簡単で、いつもの食事にちょい足ししたり、香辛料が多く使用された料理を選ぶだけで十分です。なお、辛味成分は刺激が強いため、からだに思わぬ悪影響を及ぼすこともありますので、1日に小さじ1杯程度を目安に摂るようにしてくださいね。